中野崇氏の著書『ハイ・パフォーマンス理論』は、バスケットボールのような対人競技で必要な身体操作スキルを、理論的に学び、実践に活かすための指南書です。
この本のポイントは、以下の3つの「構造」にあります。
- 競技構造
- 運動構造
- 身体構造
一見、運動パフォーマンスを向上させるストレッチやエクササイズの本に見えるかもしれません。しかし、本書の真価は、自分が取り組む競技の特性を理解し、最適なトレーニング方法を考えるための理論を深く掘り下げている点にあります。
本書の約3分の2は、パフォーマンス向上のための理論的な解説に充てられており、残りの3分の1では、具体的な27種類のトレーニング方法が紹介されています。
「努力と成果のギャップ」を埋めるために
本書が提唱する重要な考え方の一つに、「努力と成果のギャップをなくすこと」があります。
たとえば、競技構造を理解しないまま闇雲に筋トレをしたり、プロ選手の練習をそのまま真似したりすることは、満足感や達成感を得る一方で、実際のパフォーマンス向上にはつながらないどころか、逆効果になる可能性もあると本書は警鐘を鳴らしています。
競技構造を理解するための視点
あなたは、次のような視点でバスケットボールという競技を考えたことがありますか?
- 低重心族/高重心族
- 低重心競技/高重心競技
- 非対人競技/対人競技
- 内的集中/外的集中
これらの視点を通じて、自分の競技の特性を把握し、それに適したトレーニングに取り組むことで、より効果的なパフォーマンス向上が可能になります。本書では、これらをわかりやすく解説し、競技構造に基づいたトレーニングの考え方を示しています。
読んで感じた「気づき」
私自身、この本を読んで、「なんとなく」でしか理解していなかったバスケットボールの「競技構造」と「身体構造」の関係が明確になり、それに基づく「運動構造」の重要性を深く理解できました。
特に印象的だったのは、「腰を落とす」と「姿勢を低くする」は別物である、という説明です。多くの日本人が感覚的に持つ「姿勢を低くする」という動作と、バスケットボールにおけるそれが求める身体動作の違いが、具体的に解説されていました。
こんな人におすすめ
本書は、バスケットボールに取り組むすべてのプレーヤーにとって必読の一冊です。特に、以下の方におすすめです
●初心者やブランクのあるプレーヤー
自主練習の質を高めたい方
●中級者以上のプレーヤー
競技理解を深め、効率的なトレーニングを目指したい方
● コーチを目指す方
選手のパフォーマンスを引き出す理論を学びたい方
バスケットボールをより深く理解し、楽しむための第一歩として、ぜひ手に取ってみてください。