初心者向けスクールに参加されたことのある方は、練習プログラムの中で遊びを取り入れたトレーニングを経験したことがあると思います。単に「バスケの楽しさを知ってほしい」「コミュニケーションのため」というだけではなく、それらはコーディネーショントレーニングとしても取り入れられています。
2ボールハンドリングも練習メニューとしてよく取り入れられていますが、この練習もコーディネーション能力を鍛えてくれます。
コーディネーショントレーニングをやると何が鍛えられるのか?なぜやるのか?を理解する事で取り組む姿勢がかわり集中力もアップすると思いますので、ぜひ一読ください。
コーディネーション能力ってなに?
コーディネーション能力は、バランス能力、反応能力、リズム能力、定位能力、識別能力、連結能力、変換能力の7つに分けられ「自分の身体を思った通りに巧みに動かす能力」です。
7つ能力は私たちの日常生活をおくるうえでも大切な機能です。例えば下図な感じです。
スポーツを行う時にはこれら7つの能力が複雑に組み合わさって身体を動かしているとされています。
コーディネーショントレーニングやるとやらないで何に差が出る?
特に初心者の方はこんな風に思い悩んだことがあるのではないでしょうか・・・
- 一生懸命、長く練習をしていのに思うように上達しない
- 上手い人と同じようにできない
- ゲームで練習どおりにいかない
自分が思うとおりに身体が動いていないんだね。技術練習だけにとらわれないで!
技術練習だけに注目して練習を行っていると、ディフェンスがついたとき、オールコートで状況が常に変わる試合になった時に身体の反応がついていけません。
7つの能力をバスケットボールのシーンでいうと・・・
バランス能力
身体バランスを維持し、崩れたバランスを素早く修正する能力
ディフェンスからのプレッシャーやコンタクトを受けたときに、バランスを崩したまま体勢が整わない。シュート成功率の低下、ドリブル時には直接ボールをカットされなくてもボールを失ってしまうなど。
そのほか、ボールを扱っていなくても急発信や急停止時にバランスを崩し次の動作が遅くなります。
バランス能力と共に、体幹を刺激するメニューを行うとより効果的です。
反応能力(リアクション)
何かの合図や信号に的確な動作で反応する能力
パスをファンブル(キャッチミス)してしまう。1対1でディフェンスが出してくる手の動き(カット)に反応できず対抗できない(オフハンドやレッグスルーなどでかわせない)など。
誰しもディフェンスでカットを試みて、バックチェンジなどで瞬時にかわされた!という経験があると思いますが、あの反応です。
リズム能力
リズムを合わせたり、作ったり、タイミングをつかむ能力
シュートブロックをこころみてタイミングがあわず先に跳んでしまったり、リズムを崩されてブロックを交わされてしまうなど。1対1でもリズムが単調となり思うように抜けないなどがあります。
リズム能力は「相手のリズムを読み合わせること」「相手のリズムを崩すこと」の2つが大切です。バスケは音より目でみる情報から、身体の動きのリズムを読むとることが多いです。
リズムが単調な相手は制しやすく、リズムが読めない相手はやりずらい、そんな経験もあるのでは?
定位能力(オリエンテーション)
障害物や動いている物との位置関係を空間、時間的に把握する能力
ゴールに向かって走る味方にパスを出す時、前方に出しすぎたり、高すぎたり、低すぎたり、タイミングに合わせられないなど。初心者の方が特に苦手とする傾向が高く、相手との距離感がつかめない、相手との距離や相手の動きのタイミングをあわせることができないなど。
飛んできたボールに自身を合わせるのも定位能力となります。
識別能力(ディファレンシング)
手足や道具を視覚と連携させて身体の動きを調整する能力
パスにおいて距離が近いチームメイトにも強いパスをだしてしまう、手渡しパスで受け取りの程よい高さで渡せないなど。
力加減や高さ調整のコントロールが低いと上記のようなミスにつながってしまいます。
なお、正確なシュート力は「定位能力」と「識別能力」から生み出されます。
連結能力(カップリング)
タイミグよく身体をスムーズに動かす能力
レイアップシュートやドリブルの時にボールを持っていないほうの手でボールを守れず、チェックされてしまうなど。
左右の手や上半身と下半身で別の動きを同時に行うなど、あらゆる個所の関節や筋肉を同調させながら複数の技術を同時に使う能力です。そのため連結能力は技術的な成長に大きく作用します。
変換能力(アダプタビリティ)
状況変化に応じて、動きを瞬時に切り替えたり、相手の動作を予測する能力
ディフェンスを抜こうとして止められた時、止まってボールを持つことしかできない。複数のディフェンスに囲まれるトラップに対応できずボールをとられてしまうなど。
ピンチの時や相手の変化に対し、瞬時に、かつ最適な対応をとるための能力です。
コーディネーショントレーニングに取り組むときのポイント
コーディネーショントレーニングに興味を持ってもらい、練習に取り入れてくれる方にいくつかポイントをお伝えしたと思います。
- コーディネーショントレーニングは器用性を高めるための練習であり、脳と身体に刺激を与えることが大切
- 「ちょっと難しい」に挑戦し、できるようなること自体が最大の目的ではない
- 極めるまでやろうとすると動きの自動化になってしまう。もちろん、最終的に極める結果になるが、それは自身に繋がるのでOK
脳と身体への刺激が目的なので、動きの正確性や速さ強さを求める技術練習とは異なります。様々な動きに挑戦する(刺激を求める)ことが重要です。そのため意欲をかきたてる雰囲気づくりとして、遊び要素を含めて行われることが多いのです。
まとめ
コーディネーショントレーニングの目的は「自分が思ったとおりに身体を動かせるようになること」です。これら能力を鍛えることは、怪我の予防や、利き手側の練習偏りを減らす効果もあります。
なお、コーディネーショントレーニングはキッズ向けバスケスクールで積極的に取り入られています。理由の一つに「コーディネーション能力のもととなる神経回路の発達は12歳くらいまでがほぼピークをむかえる」というのがあります。
神経系の発育は12歳でほぼ100%になるのです。そのため「12歳まではいろいろなスポーツ・水泳・ピアノなどを行い脳に刺激を与えるのがよい」といわれているのです。
では、大人はやってもあまり効果ないのでは?と思う方もいるかもしれませんが私はそうは思いません。
子供の頃に記憶した身体の動きや脳の中に眠ったままの運動神経を呼び覚ます効果や、すでにある能力を連動させることに繋がると思います。私自身、2ボールハンドリングで上達した実感があります。
初心者の方は、日常では行わない身体の動きをコーディネーショントレーニングを通じてインプットすることができます。
具体的なコーディネーショントレーニング内容はまた別の機会にご紹介できればと思います。今回、一番に知ってほしかったことは、コーディネーショントレーニングの理由と価値でした。
7つ能力をしっかり磨いて身体能力アップ!スキルアップの土台を作りましょう!
今日はここまで!